家業である水産の仕事は、小学校低学年の頃からずっと手伝っていました。高校は水産高で、大学も農学部で水産学科を学びました。
親からはすぐに家業に入るのではなく、経営をするためには世間勉強のため「他人の飯を食べろ」と言われまして、大学卒業してからは魚を輸入する商社に就職。アフリカのタコやニュージーランドのタイを輸入する仕事を2年やりました。すぐに地元に帰りたくなかったんで(笑)。サラリーマンをやめたあとは大学時代アルバイトしていたコンビニチェーン店で店長を経験して、28歳のときに地元に帰りました。
ちょうど3年前に僕が現在の事業を継承しました。就業したばかりの頃は、今やっている仕事を早く覚えて、一人前になたい!って思っていました。
私が帰ってきて7、8年目になったころ、今では量販店や外食産業などさまざまな場所に売り先を決め、「愛南宇佐の鯛」という顔の見える形で販売していくうち、品質も認められて販売尾数も増えていきまして、事業規模が拡大していきました。
関西や関東のバイヤーの方が、我々の養殖のよさである365日安定出荷できるところに注目し、お問い合わせくださることも増えました。自分たちが営業で出向くよりも、バイヤーの方に実際に沖合いの現場を見てもらい、我々の取組を見てもらったほうが商談はうまくいきます。販路は関西がメインですが、いまでは関東や、札幌など北海道にも卸しています。
現在の仕事は、一緒に働く社員のみなさんから1つずつ、餌やりから作業までいろいろな形で教えてもらいました。養殖や経営で困ったときの相談相手は、同業者の同年代の方たちや、諸先輩方ですね。養殖に携わっている方の意見やアドバイスなど、いろいろと参考にさせてもらっています。
魚類養殖の会議や、魚類養殖協議会にも、僕と同年代の方がいますので頼りにしていますし、県内外にもそういった近い立場の方がたくさんいるので心強いです。
水産業のいいところは、やっぱり自然が相手だということかな。美しい太平洋で、いい環境で養殖の仕事ができるのが醍醐味です。鯛の養殖でいい点といえば、人工種苗でたまごから孵化させ人の手とともに完全養殖でやっていますので、一年中安定して魚を育てることができ、かつ病気にも強い魚を育てることができるところです。
鯛はある程度方法が確立されている養殖なんで、非常にやりやすい養殖だと思います。ただ、やっぱり自然相手なので、自分の思い通りにコントロールできないことも多いです。晴れた日もあったり、雨の日もあったり、風の日もあったりという形で、なかなか思っている作業とは違い厳しい面もあります。6月から10月までは一番台風が気になりますし、あとは赤潮かな。我々は養殖なので赤潮が気になります。自然相手なんで何が起こるかわからない。
実際に6年前の東日本大震災では津波などいろいろ予想外の出来事がありましたからね。自然災害に対しても、しっかりとした形の漁業施設管理を徹底しなければと考えています。
この仕事で笑顔になれることといえば、みなさんに美味しい魚を届けて、食べてもらって、喜んでもらえるところです。実際、自分が店頭に立ち、試食販売という形でお客さんとふれあうチャンスもあるのですが、直接笑顔が見られるときは嬉しいですね。我々は外食産業の方にも出荷しているので、多くのお客さんに食べてもらって、喜んでもらう、美味しいって言ってもらえることが、やっぱり笑顔になれる嬉しい瞬間です。
それから、僕には中学2年と中学1年生の子どもがいますが、彼らが「将来は鯛の仕事をやっていきたい」と言ってくれているのも嬉しいです。僕よりも将来を決めるのが早い様子ですが…(笑)。
愛媛で育った、養殖の良い真鯛を全国に届けたいです。みなさんにもっと美味しい魚を届けて、食べてもらって、喜んでもらいたい。今は主に国内で流通販売していますけど、これからは海外での販路拡大を目指したいと思っています。
やっぱり人口が減っていく中、魚を食べる人の数も減っているので、日本だけではなく世界の方にも目を向けていきたいです。