学生時代は環境系の大学で、森林生態について興味を持って勉強していました。将来は植物に携わる仕事がしたいと思っていたんです。大学時代、森林組合に就職された先輩がいて、無意識のうちに今の仕事が選択肢に含まれていました。秋田の大学だったんですが、森林組合なら地元にも戻れるし、自分がしたいこともできるのかなと。
で、就職活動中にいまの職場を見つけて。林業には詳しくはなかったんで、ほとんど知識もないまま「ただ、山が好きだ!」という理由だけで組合に突っ込んでいった感じです(笑)。
私の仕事はまず、山の大きさを測量班に測量してもらって、面積確定して資源調査をします。どんな木がどのくらい生えているかを調べ、測ったデータから整備プランを立てます。それをもとに山の所有者さんにだいたいこれぐらいの収支でできるので、整備をやらせてくださいとお願いしに行きます。実際は山の所有者が誰かわからないところが多くて苦労します。所有者がわからないと境界もわからないので…。
山の手入れをすることは、その山の所有者だけが喜ぶわけでないんです。それによって水をきれいにしたり、土砂災害が少なくなったり、山自体の機能が上がることは、ふもとの人の安全を守る意味でもすごく大事なんです。そう考えると私たちの仕事は木を切るだけではなく人々の安全を守っていることにつながる、大事な仕事かなと思います。
去年入社したので、ちょうど2年目を迎えました。山がきれいになっていくのを見ていくのは楽しいです。もともと光が全く射さないような暗い林が、現場の人に入ってもらって木を切ってもらうと、光が射しこんでくるのがほんとにキレイで。山は大好きですが、登山はしたことないんです。(笑)せっかく、石鎚山のふもとの街にいるのに。
私の仕事は、現場の人や周りの人の助けもあってこそ。特に現場の人とは、担当するまで全く関わりがなかったんですが、仕事を通して現場の人の声や、こういう気持ちでやってるとか、いろんなことが見え、話を聞けるのがすごくよかったなって。
話してくれるってことは、ちょっとは信頼してもらえてるのかなと思っています。仕事で大変なこともありますが、誰かしら何か、助けてくれるというか、手を差し伸べてくれる実感がありますね。振り返ると、やめたくなったりするような苦労はなかったかなと。
この仕事をはじめてよかったことは、車の運転が上達したことかな。ミッションの車で、舗装されていない道なき道を行くんで、アドベンチャー感が楽しいです。それから、四季を間近で感じられる生活はよかったなと思います。季節ごとの山の表情はさまざまで、ほんとうに美しいんです。
私が笑顔になれる瞬間といえば、自分が担当した山が整備されていき、最後にはきれいになってるのを見たときです。山を整備したあと、所有者さんから「この山にこんな価値があったのか!」と喜ばれたときは、何とか成功して、やれてよかったなとやりがいを感じます。
私には入社からずっと面倒を見てもらってる先輩がいるのですが、器用だし、誰からも信頼されてるんです。ここぞっていうときは腹をくくって言ってくれますし、そういう背中を見ていると、いつか自分もそうなりたいなと思います。先輩方にはもう感謝しかないです。
そんな早く簡単に一人前にはなれないですけど、しっかりできるようになりたいなって。恩をいつかどこかで返したいっていうのはずっと考えています。そして将来、後輩ができたら困ったこととかあったらまかせとけ!って笑顔を与えられるように、まずは信頼される職員になりたいですね。現場の人からもそうですけど、周りの職員さんたちからも信頼されるようになりたいです。
愛媛にはこれだけ木の資源があるので、木を形として残しながら使ってもらえる文化をもっと考えていきたいです。いま、柱などに使用できない木や枝葉は、バイオマスとして燃やして発電に使われています。いつか柱などの需要がなくなれば、せっかくキレイに育った木まで、一瞬にしてバッと燃やされ、発電燃料としてだけ使われていくんじゃないかっていう懸念もあって。
木は農作物のように1年とかの単位で成長して収穫できるものではありません。何十年、何百年と手間隙かけて昔の人が育て受け継いできたものだからこそ、もっと大事にしていきたいなと思います。